小説 オールタイムベスト 海外小説
海外小説オールタイムベスト(順不同)
「読書好きの為の読書リスト」ではなく、「海外小説、何を読んでいいかわからない方向けの読書リスト」です。
私も何を読んでいいかわからなかった時に他の方がオススメするオールタイムベストを参考に読み始めました。言うなれば私のオールタイムベストですがご参考までにどうぞ。
海外小説を読まない方と話している際によく聞くのが「日本のベストセラー小説は一通り読んでいるが海外の小説はちょっと苦手」「村上春樹は読んでるけど…」という方も是非どうぞ。
ネットのまとめサイト見て分かった気分になるより、読書は多額のお金がかからない投資です。「やっぱり自分には合わないなぁ〜小難しくて読むのが辛いなぁ〜」と思っている貴方の為の読書リストです。べつに「積ん読」になってもいいんです。後々理解できるし、また思い出したように読みたくなります。故に、ランキング形式でもなく、ピックアップした数も多くはありません。気軽に読んで頂けると思います。
「あなたに似た人」ロアルド・ダール
児童文学「チャーリーとチョコレート工場」から大人が楽しめる「あなたに似た人」と幅広い作家さんです。星新一さんが好きならオススメします。理由はひとつ。ハズレがありません。
「レベッカ」ダフネ・デューモリア
いきなり濃いのいくね〜とはおっしゃらず読んでくださいね。「レベッカ」「鳥」はヒッチコックが映画化したことでも有名です。映画化された小説はイメージしやすいです。どちらもショッキングな映画でした。本を読み慣れてない方も読み出すと止め時がわからなくなります。とにかく怖いのでオススメ。他の作品も再翻訳されているのでこの機会にどうぞ。
ダフネ・デューモリアは短編の名手でもあるので本屋で見つけたら即購入してください。
ピューリッツァー賞受賞作。
家族を養う為に良かれと思う行動が理不尽にも悪い方向へいく。アメリカという巨大な社会に振り回されていく家族。いつの時代も変わらないテーマで描かれています。映画化あり。どちらも傑作。しかもスタインベックは短編もオススメですよ。まずは「ハツカネズミと人間」、短編集の「熊のジョニー」はオススメ。
ジェームズ・ディーンで映画化もされた傑作。映画は小説の前半部だけで映画では語られなかったことが小説では詳細に描かれています。小説の味わい深さを改めて教えてくれた読み物。優れた読み物となるはずです。物語が複雑なので映画を観た後で巻末の解説を読んでから読まれることをオススメします。その時代の社会情勢や聖書を引用した物語であることが解説されています。日本人には社会情勢や聖書に書かれていることは小難しい。解説を読み意味を理解してから読むという読書方法も「あり」だと思います。是非試してみてください。読んだ後は「怒りの葡萄」をもう一度読みたくなりますよ。
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「羞恥」チョン・スチャン
訳者の斎藤真理子さんの解説を読んでから本編を読まれることをオススメします。お隣の韓国文学なのですが、韓国のことは知っているようでまったく知らなかったことが多いことに気づかされます。
北朝鮮からの脱北者3人が主人公です。オリンピック村建設予定地で朝鮮戦争時代の大量の人骨が出土します。彼ら一人一人の生い立ちが凄まじく、オリンピックという経済至上主義な概念の中で彼ら脱北者達の倫理観が少しづつ崩壊していく衝撃作。彼ら「生き残った者の羞恥」が描かれています。その羞恥とは何か? ご自分で確かめてみてください。
ここ十数年で一番印象深い作品です。
テッド・チャンの小説の大きなテーマは、「たとえ未来がわかったとしても過去や未来を変えることはできないが、今なにをするべきかを考えることはできる」今必要とされている思考だと思います。
映画化された「あなたの人生の物語」はまさにそのことを伝えてくれる素晴らしい短編です。今一番、新作が楽しみな作家です。
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「狩人の夜」の映画化では、映画「第三の男」で主役を演じたジョセフ・コットンが監督しロバート・ミッチャムが子供達を執拗に追う殺人者を演じました。モノクロ映画なのに彩り綺麗な映像を彷彿させます。幻想的な映像に腰を抜かすと思いますよ。原作本は絶版なので映画をオススメしますが、古本屋のワゴンセールに頻繁に埋もれているので見つけたら即お買い上げください。…っていうか救ってやってください。映画もレンタルビデオ店に置いていない場合もあります。では、無いものを何故オススメするのか?
子供達が体験する「恐怖」を夢の中の影と思い込み、実は邪悪で恐ろしい現実となって襲いかかってきていた。その「恐怖」とは、アメリカという巨大な何かから逃げても逃げきれないという恐怖を描いています。アメリカという直接的な表現はありませんがアメリカが推し進める経済政策や貧困層への理不尽な制裁といったことがふくまれているように思います。「怒りの葡萄」と共鳴しているようにも思います。
語りはマーク・トゥエイン「トムソーヤの冒険」のインディアンジョー(インジャンジョー)に追い詰められる恐怖を彷彿させます。インディアンジョーは差別や貧困で追い詰められた悲しいマイノリティーの側面があるのですが、「狩人の夜」で追い詰めてくる殺人者は金の為なら誰でも殺す悪い白人です。追い詰められるハラハラドキドキ感を味わってみてください。一級品です。
「ハックルベリーフィンの冒険」マーク・トゥエイン
マーク・トゥエインといえば「トムソーヤの冒険」、「ハックルベリーフィンの冒険」が有名ですが、他の作品も傑作揃い。今更と思うなかれ。年に何度も読み返したくなりますよ。オールタイムベストで1冊だけ選ぶとなると「ハックルベリーフィンの冒険」を選びます。
トウェイン完訳コレクション アーサー王宮廷のヤンキー (角川文庫)
- 作者:マーク・トウェイン
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2009/12/25
- メディア: 文庫
映画も素晴らしく釘付けになりますが「エデンの東」同様に小説の前半部しか描かれていません。後半部も腰抜かすくらいビックリしました。成長を止めたオスカルが戦後ドイツ社会の様相を体験していく前半部と自立したオスカルがトラブルに巻き込まれて身も心もボロボロになる後半部。戦争に巻き込まれた市井の人々を描くことで無垢で何事も無関心だった大人達がヒットラーに熱狂し従って悲惨な目に遭う様相。これ、今の日本のことだよ。
ヘルマン・ヘッセといえば「車輪の下」傑作中の傑作です。「車輪の下」同様に傑作なのが「デミアン」です。
映画や小説のジャンルにギムナジウムというジャンルがあります。映画ではロビン・ウィリアムズ主演「いまを生きる」、「スクールオブロック」もその系譜です。漫画では萩尾望都の「トーマの心臓」。代表的な小説は「飛ぶ教室」。寄宿学校を舞台に思春期の友情や生きることへの不安や恍惚、子供から大人への成長過程を描いています。傑作揃いですね。ゲームでは「ブリー」という傑作も出てます。その中でもサスペンス要素と悟りのような文章を含んだ面白い小説が「デミアン」です。
現代兵器を利用した悲惨な戦争、第一次世界対戦でこれまで経験したことがない悲しみを味わった人々が鬱になり自己を問うようになる。「デミアン」は東洋的な悟りのような小説。当時の人々に受け入れられ今もなお読み継がれている傑作です。誰しも死にたいと思ったことは一度や二度ではないはず。是非読んでください。ヘッセの大ファンになりますよ。ただし、暗い。自分の鬱屈した気持ちに押し潰されそうになります。そんなときは「スクールオブロック」観て気持ちのバランスを保ち続けてください。
スタンダールといえば「赤と黒」も傑作中の傑作ですが、「パルムの僧院」もオススメ。ナポレオンに憧れる無垢な美青年がワーテルローの戦いに飛び込んでいくことから物語が転がっていきます。恋、戦争、政治、冒険、宮廷のお家騒動と物語は目まぐるしく展開していきます。面白いのなんの止め時がわからなくなります。海外ドラマをイッキ見しているような感覚です。オススメ!!
「暗黒事件」バルザック
フランス帝政時代の独裁政治を描いた実録もの。政治家の陰謀、仁義なき戦いとでもいいましょうか、その時代の空気感、独裁政治の本質を見事に描いています。しかも「人間喜劇」の登場人物や実在の人物まで出てきます。現実と虚構が入り混じった実録物。凄いですよね。
バルザックの特徴としては登場人物が他の作品にも登場します。スティーブン・キング作品の世界観が地続きであるようにバルザックも地続きなんです。当時の人はさぞ興奮したでしょうね。
ちなみにバルザックはスタンダール「パルムの僧院」を大絶賛しています。「パルムの僧院」を読むきっかけはバルザックなんです。
「ティンカー テイラー ソルジャー スパイ」ジョン・ル・カレ
ル・カレ作品は映画化も多く、映画から小説に入ったくちなんですが、おもしろい! ル・カレ作品はタイトルの付け方もセンスがありますね。映画「裏切りのサーカス」も抜群にハイセンスでおもしろい。
<サーカス(英国諜報部)の中枢部に潜むソ連の二重スパイを探せ!>
英国諜報部を引退したスマイリーが呼び戻された。その二重スパイは、かつての仇役ソ連情報部のカーラを影で操っているという。007のような派手なアクションはないがジリジリと追い詰めていく。その展開は元英国諜報部員のル・カレならではの説得力がありグイグイ読ませます。
ジョージ・スマイリー三部作「寒い国から帰ってきたスパイ」「スクールボーイ閣下」「スマイリーと仲間たち」も素晴らしいが、英国女優がアラブのテロ組織に潜入する「リトルドラマーガール」も読ませますよ。
何より文学として優れています。これぞ小説の醍醐味です。
「スパイ達の遺産」は「寒い国から帰ってきたスパイ」の半世紀ぶりの続編。これで全て決着つきました。ル・カレ凄すぎる。
「月と六ペンス」サマセット・モーム
サマセット・モームもどれもおもしろいのですが、「月と六ペンス」は読みやすい。世界各地を取材旅行と偽って旅していたモームは、諜報部員だったそうです。謎が多い作家ですね。オススメです。
書簡体で綴られた恋愛小説の傑作。男女の別れ話と思いきやお互いが当て付けとばかりに様々な人と関係を持ち悲劇的な結末を迎える。恋愛とは、望みが叶うことではなく悲劇それ自体こそが恋愛の成就。
サディスティックな男女を描くことで貴族の欺瞞を皮肉っていた側面もあり革命の原動力になったという分析もあるようです。ラクロは軍人。退役後出版し時の人となります。紆余曲折あり軍人に復帰しラクロ自身も悲劇的な最後を遂げる。何故戦場に戻ったのかそれだけが疑問です。
「香水」パトリック・ジュースキント
18世紀、ズバ抜けた嗅覚を持った孤児が成長し香水調合師としてパリを熱狂させる。ある日、処女の体臭に我を忘れてしまい…
映画化もされ小説もベストセラーとなります。バルザックやエミール・ゾラと同じく、下水溝の整備が行き届いていない糞尿まみれの街の匂いが匂ってきそうな街の描写と香水というコントラストに度肝を抜かれた。小説としては映画以上に映像や嗅覚といった五感を読者に委ね、なんともいえない読後感を味わった。
「存在の耐えられない軽さ」ミラン・クンデラ
こちらもまず映画から入りました。あまりのおもしろさに小説も読み始めたのですが、これがまたおもしろい。日本文学が好きな方にはオススメ。
作者クンデラはチェコスロバキアからフランスに亡命し本作を発表。その後チェコスロバキアは解体されチェコ/スロバキア/ウクライナとして独立します。物語の舞台の時間軸はもう少し過去に遡りプラハの春を題材にした男女3人の恋愛模様を描きます。
世界的にベストセラーとなります。ここ日本では映画化の影響が大きいと思います。私も映画化されなければ知らずにいたと思います。この小説を読みチェコスロバキアに興味を持ちチェコスロバキア映画を観るようになりました。次作「不滅」もオススメします。
「スローターハウス5」「猫のゆりかご」カート・ヴォネガット・jr
ヴォネガットとといえば「タイタンの妖女」が有名ですが、この小説はかなり小難しい。じゃじゃ馬です。読みやすいのは「猫のゆりかご」。映画化もされた「スローターハウス5」です。SFやスプラスティック(ドタバタコメディ)なのでイメージを膨らませながら読んでください。なんといってもヴォネガットはエッセーもオススメです。
コニー・ウィリスの著作は、あまり好きになれなかったのですが、「クロストーク」でファンになりました。自分の中では格上げされた作家とでもいいましょうか、過小評価していたかなと反省した作家さんです。「クロストーク」はソーシャルメディアでの会話と通常の会話で進行していきます。映画で例えると「500日のサマー」のようにSNS上での会話劇が多用された映画と思ってください。ほぼ全編SNS会話のみの構成。最初は誰が喋ってるのかわからず戸惑いました。上下2段700ページというボリュームにも圧倒されましたが30ページくらい読むと慣れてくるので読むスピードも上がってきます。だんだんおもしろくなりイッキ読み。この体験は過去にない体験でした。読み物として新しいものであり、ある種の革新的なモノ。新しいジャンルの誕生かもしれません。
ここで、この方をご紹介します。
作家さんや書評家さん、翻訳家さんがピックアップされているオールタイムベストには、必ずと言っていいほどガルシア・マルケスが取り上げられています。ただし、難解なのでハードル高め。チャレンジするのであれば攻略方法をお伝えします。題して…ガルシア・マルケスの読み方!
まず、短編「予告された殺人の記憶」で文体に慣れること。次に「族長の秋」で誰が今喋ってるの?とという壁にブチ当たります。上記「クロストーク」同様に文体に慣れてくるとおもしろくなってきます。文体のリズムに乗ってください。リズムに慣れたら「コレラの時代の愛」。年寄りの純愛でチルアウト。そして「百年の孤独」で物語に酔いしれる。親子三代の繁栄と没落。壮大ですよ。
人間を描かせたらピカイチ。なんせノーベル文学賞受賞者です。
純真なエレンディラと邪悪な祖母の信じがたくも痛ましい物語: ガルシア=マルケス中短篇傑作選
- 作者:G・ガルシア=マルケス
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2019/08/23
- メディア: 単行本
わが悲しき娼婦たちの思い出 (Obra de Garc〓a M〓rquez (2004))
- 作者:ガブリエル・ガルシア=マルケス
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/09/28
- メディア: 単行本
予告された殺人の記録・十二の遍歴の物語 (Obras de Garc〓a M〓rquez (1976-1992))
- 作者:ガブリエル ガルシア=マルケス
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/01/01
- メディア: 単行本
全体主義国家が支配する近未来小説。その国家に都合のいいように歴史を改竄する仕事に従事する主人公ウィンストン・スミスが恋に落ちたところから物語が転がっていきます。新訳版ではトマス・ピンチョンが解説。こちらも合わせて読むとおもしろい。
ピンチョンが解説する二重思考がわかるとさらにおもしろくなります。現代の日本と照らし合わせながら読むことをオススメします。
トマス・ピンチョン 全小説 重力の虹[上] (Thomas Pynchon Complete Collection)
- 作者:トマス ピンチョン
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/09/30
- メディア: 単行本
トマス・ピンチョン全小説 重力の虹[下] (Thomas Pynchon Complete Collection)
- 作者:トマス ピンチョン
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/09/30
- メディア: 単行本
インヒアレント・ヴァイス ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産/2枚組/デジタルコピー付) [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
- 発売日: 2015/08/19
- メディア: Blu-ray
「ブラジルから来た少年」「ローズマリーの赤ちゃん」「死の接吻」アイラ・レヴィン
アイラ・レヴィンは読みやすくストーリーもおもしろい。オカルト要素ある「ローズマリーの赤ちゃん」や陰謀もの「ブラジルから来た少年」、犯罪もの「死の接吻」。日本のエンタメにもかなり影響を与えている作品です。残念ながら「ブラジルから来た少年」は絶版ですが映画は観れるので是非どうぞ。古本屋のワゴンセールにあれば救ってやってください。
「深夜プラス1」ギャビン・ライアル
ルパン三世に影響を与えた傑作。影響力は計り知れず、映画「トランスポーター」なんてまんま深夜プラス1。
スティーブン・マックィーンが映画化する予定だったそうですが叶わなかったようです。配役を妄想するだけで萌える。
アーヴィングはどの作品も傑作ですが絶版が多い。「ウォーターメソッドマン(川本三郎訳)」「サーカスの息子(岸本佐知子訳)」がもう出回っていないなんて酷すぎる。再販するべきですよ。名作です。
「オーランドー」ヴァージニア・ウルフ
オーランドーは何者か? 映画化もされた奇想天外な物語。映画ではティルダ・スィントン主演。予備知識無しで観たので腰抜かしてしまいました。詩人でもあるヴァージニア・ウルフは「灯台へ」「ダロウェイ夫人」の文章も素晴らしい。その中でも「オーランドー」は比較的読みやすい。
読書上級者はジェイムズ・ジョイス「ユリシーズ」、フォークナー「アブサロム、アブサロム」、プルースト「失われた時を求めて」といった『意識の流れ』(文学上の人間心理を解明する試みとして、人間の意識は絶えず流動しているとされる)を用いた手法で描かれている小説にもチャレンジしてみてください。海外文学を紹介する上でプルーストとジョイスは外すことはできません。
その練習としてヴァージニア・ウルフをオススメします。
その表現方法は、その人自体の内面を表現したり、その場の心の動きも絶えず記述していきます。その場面の大きな動きはないが時間軸が変化することで登場人物の内面のそのまた奥を知ることができる非常に奥深く、非常に難解な試み。
いつかは読みたくなりますよ。